【新しい食の楽しみ方】噛む場所によって食事の味は変わる?フードコラムニストのお悩み

「あまから手帖」(クリエテ関西)の編集顧問を努めるなど、フードコラムニストとして活躍している門上武司氏から“歯”に関する質問をいただきました。

コーヒーから日本食、フレンチにいたるまで、さまざまな食文化に精通している “食のスペシャリスト”は、食事をより楽しむために、食べ物の味は“噛む場所”で変わるのかを知りたいとのこと。

そこで歯科こえ編集部は、鶴見大学歯学部口腔内科学講座 里村一人教授のもとを訪れ、フードコラムニストだからこそ抱いている、“食と歯にまつわる疑問”についてお答えいただきました。

食事をより楽しみたい方は、参考にしてみてはいかがですか?

フードコラムニスト・門上武司氏

編集部:フードコラムニストならではの歯のお悩み、疑問などはありますか?

門上:フードコラムニストだからこそ、新しい食の楽しみ方を探しています。今まで食べ方にまでこだわったことはありませんでした。でも、舌は先端だと甘みを感じやすいなど、場所によって感じやすい味が異なりますよね。そこで、食べ物を噛む場所、噛み方によって味の感じ方は異なるのか気になったんです。

編集部:なるほど。フードコラムニストならではの質問ですね!より食事を楽しむために私も知りたいです。

大学教授が回答!味覚の感じ方に違いがでる“食べ物の砕き方”

鶴見大学歯学部口腔内科学講座 里村一人教授

編集部:食べ物を噛む場所、噛み方によって味の感じ方は異なるのでしょうか?

里村教授:初めての質問ですね(笑)
今のところ、噛む場所、噛み方によって味が変わることは、基本的にはないと考えています。人が感じる味覚には、現在5種類、すなわち甘み、塩味、酸味、苦味そしてうま味があるとされています。

編集部:そうなんですね!味はどうやって感じるのでしょうか?

里村教授:味を感じるときには、それぞれの味の原因となる味物質(※1)が食物から唾液中に溶け出し、それが味蕾(みらい)と呼ばれる部分に存在する味細胞の表面にある特定の受容体を刺激し、この刺激が神経を通して脳に伝わるというメカニズムで味を感じています。

味細胞が存在する味蕾は、口腔や咽頭などに広く分布していますが、やはり最も多いのはです。

編集部:舌のどの辺りに味蕾はあるのでしょうか?

里村教授:舌に存在する味蕾の約30%が舌前方1/3の上面に存在する茸状乳頭に、さらに約30%が舌側面の奥に存在する葉状乳頭に、そして残り約40%が舌上面の奥に存在する有郭乳頭に分布しています。このことからすれば、食べ物を砕く部位によって味の感じ方が違うという考え方は魅力的です。

編集部:私も考えたことがありませんでしたが、とても魅力的ですよね!

里村教授:食べ物の中にはさまざまな味物質が含まれており、食べ物の砕き方によって、それらが唾液に溶解する速度が違うことは十分予想されます。そのような意味では、やはり食べ物の砕き方によっても味覚の感じ方に違いがでるという考え方も興味をそそります。

味を楽しむことができるのは、脳の重要な高次機能(※2)ですからね。私に余裕があれば、本格的に研究してみたいほどです。

(※1)甘味、塩味、酸味、苦味、うま味といった基本的な5つの要素
(※2)認知機能や感情などを含めた精神機能

まとめ

「新しい食の楽しみ方を探している」フードコラムニストという職業ならではの質問でした。食事を楽しむための工夫をするのはすてきです。私たちも生涯食事を楽しめるように、歯への関心を高めてみてはいかがですか?

執筆者:歯科こえ 編集部

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