アドベンチャーマラソンという競技があることをご存じでしょうか? 世界で最も過酷なマラソンといわれ、砂漠や雪山、ジャングルなどを舞台に行われるレースです。
競技についてはもちろん、参加している選手についても詳しく知っている方が少ないのではないかと思います…。
いったいアドベンチャーマラソンとは何なのか、過酷なレースに挑む目的は何なのか、アドベンチャーマラソンの世界で活躍している北田雄夫選手に登場いただき、その魅力を語っていただきます。
北田選手は、日本人で初めて世界7大陸を走破したランナーです。北田選手には、普段取り組んでいる“驚きのトレーニング方法”や“健康管理”のほか、 “こだわりの歯ブラシ”の選び方について語っていただきました。
この記事の目次
地球の果てでレース!サバイバルをしながら数百km
――アドベンチャーマラソンとはどういったレースですか?
アドベンチャーマラソンというのは地球の果てで食料や、寝袋、サバイバル道具を自分で運びながら、何百kmも走るというレースになります。
灼熱の砂漠から、極寒の南極でレース
――7大陸走破とは、具体的にどのような地域ですか?
7大陸は、まずアジアは中国のゴビ砂漠、南米はチリのアタカマ砂漠、北米はアメリカのグランドキャニオンあたりの荒野、それからヨーロッパはスウェーデンの寒冷地、アフリカはモザンビークのサバンナ地帯、そして、オセアニアはオーストラリアの荒野、最後に南極を走ってきました。
人間が走れる限界!? 4大極地とは
――その中には4大極地があったといいます。どういった地域なのですか?
4大極地というのはですね、地球上で人間が走ることができる暑い砂漠地帯、寒い北極圏や南極、衛生環境の悪いジャングル、標高の高い山を指していますね。
――4大極地でのつらかった思い出を教えてください
暑いところでは45℃を超えてきますし、日陰がない中ずっと走りつづけているので、熱中症になりますよね。
寒いところでは、-30℃になるので、一度汗をかくと全部凍ってくるんです。凍ってしまうと解凍できないので危険もありますし、地面も雪や氷なので走る苦労もありました。
ジャングルですと衛生環境も悪いですから、不潔と戦いつづけなければいけないといったストレスがあります。たくさんの虫から感染病をもらってしまうという可能性もありますので怖かったですね。
山ですと、標高が高いので高山病になりうるなどあって、さまざまな苦労がありました。
生きる喜びを実感!地球のすばらしさを体験
写真提供:北田雄夫選手
――そのような過酷なレースに挑む理由は何ですか?
地球のすばらしさを見ることができる・体験できる。
人間が行かないような場所に踏み入れて、自分の体1つで戦っていると、涙が出てしまうような朝日とか、音もないような南極世界を見ることができるんです。
自分の体と持っていったものだけで限界に挑むというチャレンジは日常できないことなので、生きる喜びを感じますね。
30歳からのスタート!死人が出たこともあるスポーツの舞台へ
――どうやってアドベンチャーマラソンと出会ったのですか?
きっかけはインターネットでした。「誰もやっていないスポーツ」「珍しいスポーツ」「過酷」「クレイジー」などと打っていったらですね、見つけてしまったんです。もう「これだ!」と思って始めました。
――何の迷いもなかったですか?
迷いはありました。「砂漠で1週間走る」とか、「死人が出たこともある」とか、「遭難して1週間さまよった」とかの情報も出てきたので怖かったですけれど、“ぞくぞく”“わくわく”している自分がいてですね…飛び込みました(笑)。
――アドベンチャーマラソンを始めた年齢を教えてください
始めたのは30歳のときです。社会人になってから7、8年、ずっと自分の進む道というか、自分にしかできないことって何かあるんじゃないか、人生をかけて何かにチャレンジしたいという思いがあって、不安や恐怖はありましたけれども進んだんです。
賞金はなし!あるのはメダルやTシャツ
――レースに賞金は出るのでしょうか?
この競技に対価、賞金はないんです。もらえるのはメダルと完走した記念のTシャツ、現地の民芸品…(笑)。達成感と、この上ない喜びはありますよ。
“地球の自然”対“人間”!レースを見る上での注目ポイント
――競技はどうやって見ることができますか?
僕のSNS、YouTube等で、動画をたくさん上げていますので、そこからご覧いただけます。
――競技を観覧する上で、注目すべきポイントを教えてください
このレースの難しさであり、醍醐味でもあるんですけれど、ほかのマラソンと違って走るだけじゃないんですよね。
自然を舞台に、熱中症であったり、幻覚を見たりといった、いろいろなアクシデントがあります。それにどう向き合って対処していくか、その前にどう準備したのか、そういった要素を踏まえてご覧いただくと、すごく深みがあっておもしろいんじゃないかなと。
“地球の自然”対“人間”みたいな、そういった意味ではほかのスポーツにはない見応えがあるんじゃないかなと思います。
――レース以外では、どのような取り組みをしているのか教えてください
このアドベンチャーマラソンというのが“超マイナー”で、ほとんどの方が知らない競技なんです。それを広く知っていただくために発信はしていますね。
そしてスポーツではあるんですが、かなり冒険に近い活動なので、多くの学生から社会人、経営者の方々の前で講演させていただいています。そこで、自分の体験、見てきた世界をリアルにお届けしています。
東京から大阪までランニング!53時間寝ずに富士山での走り込み
――普段はどのようなトレーニングを行っているのですか?
普段は近くの公園で、10km、20km走ったりなんですけれども、ちょっと特殊なものでいいますとリュックサックにテントや寝袋を背負って東京から大阪まで500km走ったりとかするトレーニングもしています。
本番が500kmとか1000kmの距離で、気温が40℃の砂漠といった過酷な環境だったりするので、こういった練習もしますね。
サハラ砂漠のレース前は、どこまで睡眠の限界がきたら人間の思考はダメになって、体は機能を停止するのかを把握しておく必要があったので、日本で1番酸素の薄い富士山に行って、海からの山頂ルートと主要4ルートを上って、下りて、上って、下りて…というのを53時間寝ずに繰り返すというトレーニングをしました。
サハラ砂漠でも歯磨き!ブラッシングはリフレッシュのきっかけ
――体をいたわったりはしているのですか?
毎日の入浴を心がけてですね、その後には20分、30分ほど、自分の体と対話しながらマッサージ、ストレッチをしています。
――お口のケアで気をつけていることなどあったら教えてください
歯ブラシは電動ではないもので、硬さも“ふつう”というものを選んでいます。それでいて少しコンパクトなものを使っています。
大きい歯ブラシだとおおざっぱに磨いている感じがして好きじゃないんです。歯磨きをしているときは、リラックスしている感じあって、それをしながら“ぼーっ”としている時間が好きなんですよ。
荷物を1gでも軽くしたいレース中も歯ブラシは必須で持っていくんです。サハラ砂漠でもチェックポイントで歯ブラシをしていました。自分の中でリフレッシュのきっかけになっているんです。
まとめ
知られざるアドベンチャーマラソンの世界を垣間見ることができました。
過酷なレースに挑みだしたのが30歳からというのは驚きです。また、レースに挑むためのトレーニングも、想像を超える内容でした。
そんな超人的なレースの中、歯磨きがリフレッシュのきっかけになっているというのが印象的です。
取材日:2019年12月24日
※次の記事「アドベンチャーランナー・北田雄夫選手が明かす!危険な動物、幻覚、歯医者の思い出」
プロフィール
北田雄夫
1984年生まれ。大阪府堺市出身。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参加。
2017年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン」を走破。
2020年は、ヒマラヤ山脈にて850kmのレースに挑む。
「北田雄夫 アドベンチャーランナー公式サイト」
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