冷たいものを食べた時に歯がしみた…そういう経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。せっかく美味しいものを食べても、それを味わうことができないのは悲しいですね。食べることは人生の喜びです。美味しいものを美味しく味わうために歯はとても大切ですが、痛みが出なければなかなか病院へも行きづらいものです。
今回は、冷たいものや酸っぱいもの、あたたかいものを食べたり飲んだりすると歯がしみる、「知覚過敏」の症状についてその原因や対処法、治療について詳しくご紹介していきます。疲労やストレス、ホワイトニングとの関係性についても詳しく解説しています。
この記事の目次
1.知覚過敏とはどんな症状なの?
知覚過敏とは、冷たいものや酸っぱいもの、温かいものを食べたり飲んだりした時や、歯を磨いた時、歯に風があたった時などに、一瞬突き抜けるように歯がしみて、痛みを感じる症状を指します。
原因や程度はさまざまですが、一般的に虫歯のように痛みが慢性的に継続することはありません。また、知覚過敏の症状が進行すると冷たいものだけでなく温かいものがしみるようになります。
2.知覚過敏になる4つの原因
では、知覚過敏になる原因とはどのようなものがあるのでしょうか。4つの原因をこの章で紹介していきます。
2-1 誤った歯みがき
人体のうちで最も硬いといわれ、歯のまわりを覆っているエナメル質ですが、いくつかの原因で失われることがわかっています。そのうちの一つが誤った歯みがきです。
特に硬いブラシでゴシゴシ磨くのは厳禁です。染め出し液を一度でも使用したことのある方なら分かると思いますが、汚れがつくのは歯と歯の隙間と、歯と歯ぐきの境目、大臼歯の溝です。よく歯みがきというと前歯の表面ばかりをゴシゴシ磨いてしまう人がいますが、汚れを落とすつもりがただエナメル質を傷つけているだけ、なんてことになりかねないので注意が必要です。
2-2 歯磨き粉のつけすぎ
歯磨き粉には「研磨剤」と呼ばれる成分が配合されています。この研磨剤は、コーヒーやお茶など着色しやすいものを食べた時にできる着色汚れ(ステイン)を除去し、歯をきれいに見せてくれる効果があります。
しかし、虫歯予防には効果がないだけでなく、エナメル質を傷つける可能性があります。ですから長期間にわたってたくさん研磨剤が入った歯磨き粉で歯の表面をゴシゴシしてしまうと、歯は悲鳴を上げてしまいます。
2-3 歯ぎしりと食いしばり
歯ぎしりや食いしばりは、程度の差こそあれどの人にも大なり小なり見られる行為であることが分かっています。歯ぎしりや食いしばりは、またの名を「ブラキシズム(口腔内悪習慣)」とも呼ばれ、エナメル質が破損してしまうのはもちろん、歯が削られたり、歯にヒビが入ったりする原因ともなります。
怖いのは、歯ぎしりや食いしばりに自覚症状がない場合です。たった一晩の歯ぎしりは、一生分の咀嚼に匹敵する、と言われるほど歯や顎にとってダメージが大きいのです。長く健康な歯を保つためには、歯医者さんでマウスピースを作製してもらい、寝ている間に装着して改善を図る方法があります。
2-4 歯周病
知覚過敏になると、食事の時だけでなく歯みがきをする時も痛みを感じやすくなります。普段は痛みをそれほど感じないことから、歯みがきが辛くなり、しっかりと磨くことができなくなるケースがあります。
しかし、磨き残しが放置され、歯に歯垢がたまると、歯垢から出る毒素によりさらに痛みが激しくなってしまいます。こうなると悪循環に陥りますので、しっかりと歯みがきをして歯垢を除去し、毒素の感染源を絶たねばなりません。
3.知覚過敏の治療はどのようなことをするの?
3-1.知覚過敏が起きる状態
図表の歯周組織にあるように、歯はその周りをエナメル質で覆われています。しかし何らかの原因により歯の周囲を覆っているエナメル質が剥がれ、その中の象牙質が露出してしまうと、知覚過敏による痛みを感じやすくなってしまいます。
また、歯周病などで歯茎が下がってしまうと、知覚過敏になりやすくなります。なぜなら通常歯茎に覆われている部分はエナメル質に覆われておらず、象牙質が剥き出しになっているからです。
それだけではなく、その部分は無数の穴が開き、歯の神経を直接刺激してしまいます。飲んだり食べたり風があたったりすると、無数に空いた穴からとめどなく神経が刺激されるのです。考えただけで恐ろしいですね。
3-2 自宅でできるケア
何となく歯が染みるけれども歯医者さんで治療を必要とするほどでもない、という人は、「知覚過敏用の歯磨き粉」をぜひ試してみましょう。「知覚過敏用の歯磨き粉って通常の歯みがき粉と何が違うの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
その違いは、硫酸カリウム(カリウムイオン)が入っているかいないかです。硫酸カリウムは、露出してしまった象牙質をコーティングし、象牙細管と呼ばれる歯の神経に刺激が伝わらないように働きかけます。使い続けることで軽度の知覚過敏であれば緩和される働きがあります。
3-3 歯医者さんでの治療
薬の塗布
歯医者さんで知覚過敏を指摘された場合に、まず選択肢として上がる治療法の一つに、知覚過敏鈍麻剤(高濃度フッ化物)の塗布が挙げられます。これは、エナメル質が剥がれ、無数の穴が開いてしまった象牙質表面に対して薬剤により象牙質表面をふさぐ働きがあります。
コンポレットレジンでの修復
コンポレットレジンとは歯科用の樹脂素材のことで、歯科用語でCRとも呼ばれるものです。歯医者さんで治療したことがある方ならご存じの方も多いかもしれません。型を取る必要はなく、一日で終えることのできるプラスチックの詰め物ですが、知覚過敏の治療にも使われることはあまり知られていないかもしれません。
コンポレットレジンでの知覚過敏の治療は、早ければ当日から問題なく食事をすることができる人もいますが、噛み合わせが強い場合は外れることもあり、レジンでの治療が向かないケースもあります。
レーザー治療
最近はレーザー治療を積極的に行う医院も増えてきましたが、レーザー治療は知覚過敏の症状にも効果を発揮します。弱いレーザーを患部に当てることでエナメル質が剥がれた象牙質に薄い膜ができ、歯をコーティングしてくれます。痛みが緩和されるだけでなく、身体にも優しい治療といえます。
4.知覚過敏と疲労・ストレスとの関係は?
知覚過敏の原因は間違った歯みがきや、歯ぎしりや食いしばり、歯周病による歯茎が下がることなどによる象牙質の露出と考えられていますが、疲労やストレスが強い時に症状が酷くなる人も少なくなく、それらとの関係性が指摘されています。
知覚過敏に限ったことではなく、歯肉の腫れなど口内環境の悪化は、全身状態と切っても切り離すことのできない関係にあります。
知覚過敏に限らずお口の中の不調を感じたら、体調不良のサインの一つととらえて、歯を清潔に保ち十分な栄養と睡眠を取ることをおすすめします。
5.知覚過敏とホワイトニングとの関係は?
今では芸能人に限らず一般の人たちの間にも歯を白くするホワイトニングが広まっています。誰もが白く輝く歯にあこがれ、歯医者さんにおいても施術メニューの中で取り扱うところが増えています。
しかし、ホワイトニングには知覚過敏のリスクがあることはあまり知られていないかもしれません。
5-1 ホワイトニングで知覚過敏になる原因
歯に問題がある
虫歯や歯周病などでそもそもエナメル質が剥がれ象牙質がむき出しになっている箇所があったり、適合の悪い(合っていない)インレーやクラウンなどの被せもの、歯のヒビ割れなどがあったりする歯に対してホワイトニングを行うと、薬剤が象牙質に伝わり、痛みを引き起こしてしまいます。
ホワイトニングの薬剤や頻度による問題
ホワイトニング剤には過酸化水素水や過酸化尿素が含まれており、白くなる効果が高ければ高いほど、知覚過敏の症状が出やすくなります。また、一日に行う回数が多ければ多いほど、ホワイトニングにかける時間が長くなるほど歯への負担がかかることを理解しておきましょう。
5-2 オフィスホワイトニングか、ホームホワイトニングか?
オフィスホワイトニング
ホワイトニングには大きく分けて2種類あります。歯科医院で行うホワイトニングはオフィスホワイトニングといい、主に過酸化水素を使用しています。比較的薬剤の濃度が高く、効果も実感しやすいのが特長です。
しかし、知覚過敏の症状がすでにある方や、歯がしみやすい人、虫歯や歯ぎしり、食いしばりなどの症状がある人は歯がしみてしまう可能性があります。それでもホワイトニングを希望する場合は、薬剤を低濃度にしてもらうか、あるいは他の薬剤があるかどうかを医師に相談してみましょう。
ホームホワイトニング
歯医者さんで専用のマウスピースを作製してもらい、自宅でマウスピースにホワイトニングの薬剤を入れ歯に装着することで、少しずつ歯を白くする方法です。オフィスホワイトニングと同じく過酸化水素を使用していますが、その濃度は高くありません。ですからオフィスホワイトニングと比べるとしみづらいと言えるでしょう。
6.まとめ
知覚過敏についてさまざまな角度からお伝えしてきました。知覚過敏の辛さはなった人でなければ分かりづらいかもしれません。しかし大切な歯だからこそ、何か問題が出てしまえば食事も楽しむことができず、何事にも集中することができません。
今は歯に何の問題もないからと軽く考えず、問題がない今だからこそ歯の健康に気を配ることで、末永く自分の歯を保つことができるように努力をしたいものですね。
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