歯磨きで血が出る原因とは?出血時の対処法と根本治療を解説

歯磨きで血が出る原因とは?出血時の対処法と根本治療を解説

歯磨きをしていると出血、そんな経験をしたことがある方は多いと思います。ダラダラと大量に出血がある場合はもちろん、出血が少なくても原因が分からないと不安になってしまいます。

この記事では、歯磨きによる出血の原因と治療方法を紹介しています。出血したときに血を出し切った方がいいのかについても説明しているので、ぜひ参考にしてください。

この記事の目次

1.歯磨きで出血する原因

1-1.歯周病による出血

歯磨きをしていて歯茎から出血する原因の90%は歯周病であると言われています。歯と歯茎の間に歯垢が溜まって歯周病菌が繁殖すると、歯茎が炎症を起こします。この歯肉炎に歯磨きによる刺激が加わると出血する場合があります。出血量は歯周病の進行具合によって変わり、重度の歯周病の場合は大量の出血をすることもあります。

1-2.歯周病以外の原因による出血

1-2-1.間違った歯磨き

歯を磨くときに力を入れすぎると、歯茎が傷ついて出血する場合があります。間違ったブラッシングを行えば、歯茎が腫れていなくても傷つけてしまいます。また、毛先が硬い歯ブラシ、塩やスクラブ入りの歯磨き粉は、歯茎へ与える刺激が強くなるので注意が必要です。

1-2-2.薬の服用

服用している薬の作用で歯茎から出血しやすくなります。血圧を下げる降圧剤やてんかんの薬は、長期間服用していると歯茎が腫れやすくなります。その部分に歯磨きの刺激が加わると出血する場合があります。また、心筋梗塞や脳梗塞などに使われる抗凝固剤は血液の流れを良くする作用があるので、出血が止まりにくくなります。

1-2-3.ドライマウス

ドライマウスによって唾液の分泌量が減るとお口の粘膜を守る機能が低下して、歯磨きで出血しやすい状態になります。さらに、唾液に含まれる抗菌作用とお口の汚れを洗い流す働きも低下します。その結果、歯垢が溜まって細菌が繁殖を活発にすることで炎症が起こり、歯磨きの刺激で出血することになります。

1-2-4.歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは、歯茎に大きな負担が加わるので炎症を引き起こす原因となります。歯磨きによって炎症部分が傷ついて出血します。

歯磨き_血_歯ぎしりする男性

1-2-5. ホルモンバランス

思春期や生理、妊娠、更年期障害などホルモンバランスが変化する時期は歯茎に炎症が起こりやすいです。エストロゲンという女性ホルモンを好む細菌の活動が盛んになるからです。炎症が出やすい時期は、歯磨きによって出血することも多くなります。

1-2-6.喫煙

喫煙は毛細血管を収縮させるので、血の巡りが悪くなって常に内側の歯茎が腫れたような状態になっています。また、喫煙によって白血球が減ると抵抗力や免疫力が落ちるため歯周病になりやすく、歯磨きによって出血する確率も高くなります。

1-2-7. 血液や全身の病気

歯磨きをしていて出血があったときは、大きな病気の徴候の可能性もあります。白血病や血友病などの血液の病気では、歯茎から出血する場合があります。また、心臓病や糖尿病、癌などの抵抗力が落ちる病気では、歯周病が原因で出血しやすくなります。

2.出血は出し切った方がいい?

歯磨きをしていて歯茎から出血したとき、気になるのはそのまま血を出してしまっていいのか、なるべく患部を刺激せずに出血させないよう気を配った方がいいかです。結論を言うと、基本的にはそのまま血を出してしまっても問題ありませんが、場合によっては出血を控えた方がいい状況もあるので気をつけてください。

2-1.出血は新陳代謝を促進

歯磨きによる歯茎からの出血はほとんどの場合、歯周病が原因です。そのため、歯磨きを怠ってしまうとどんどん症状を進行させてしまうことになります。逆に歯磨きで歯茎を刺激することで新陳代謝や血行が促されて、元気な歯茎に生まれ変わることができます。細菌が溜まっているから炎症が起こっているわけで、悪い血を出し切ることで細菌の増殖を抑えることができます。

2-2.出血を控えたい場合

歯石が歯に付着している状態では、出血を控えた方がいいです。この場合、出血すると淀んだ血が歯石によって歯の周りに溜まってしまいます。そうなると歯茎がただれ、炎症が悪化する原因となります。歯医者さんで歯石を取ってもらってから、血を出し切るようにしましょう。また、腫れた箇所に歯ブラシを当てると強い痛みがある場合も、無理にブラッシングをするのは控えましょう。

3.歯磨きで出血する場合の治療方法

3-1.根本的に対策するには歯周病治療が必要

3-1-1.ブラッシング指導

歯磨き中に血が出る原因が歯周病である場合、普段の歯磨きでプラーク(歯垢)をコントロールすることが大事になります。歯医者さんでは正しい歯ブラシの動かし方から強さ、歯の大きさや歯並びなども考えた一人ひとりに適したブラッシングの仕方を指導してくれます。歯垢を取り残しやすい部分を教えてもらうことで、家でも効率の良い歯磨きをできるようになります。軽度の歯周病であれば、セルフケアをしっかり行うことで改善できます。

3-1-2.クリーニング

歯磨きをしっかり行ってもすべての歯垢を取り切れるわけではありません。そのため、定期的に歯医者さんでクリーニングをしてもらって、歯垢や歯石を取ってもらう必要があります。歯医者さんで行うクリーニングは保険診療のものと、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼ばれる自由診療のものがあります。

保険診療のクリーニングでは歯石取りを行い、PMTCはそれに加えて専用の器具を使用した歯面の洗浄や研磨、歯周ポケット(歯と歯茎の溝)の洗浄、歯を丈夫にするフッ素湿布などのメニューがあります。

PMTCの内容は歯医者さんによって異なるので、費用も5,000~30,000円と幅があります。歯をきれいにするだけでなく、虫歯や歯周病の予防に有効です。

3-1-3.スケーリング

スケーラーという先の尖った道具で、歯石をひっかくようにして取る治療です。超音波スケーラーの場合は、高速の振動で歯石を粉砕して取り除きます。スケーリングでは主に、歯茎から上の部分の目に見える歯石を除去します。軽度の歯周病であれば、スケーリングを行うことで改善できます。

3-1-4.ルートプレーニング

歯周ポケット深くの歯の根に付着した歯石を除去するための治療です。中等度の歯周病治療に用いられ、スケーリングでは取り切れない深い場所にある歯石を取り除きます。痛みを軽減するために、局所麻酔をしてから処置を行う場合が多いです。

3-1-5.フラップ手術

麻酔をしてから歯茎を切開して、歯の内部にある歯石を取り除く外科的処置です。重度の歯周病治療で行われます。

3-1-6.レーザー治療

エルビウムヤグレーザーは、スケーラーでは届かない歯周ポケットの深い場所の歯石を除去できます。細菌を殺菌する働きや炎症を起こした歯茎の治療をすることができます。痛みや出血が少ない処置が可能なので、患者さんの負担を軽減できます。

3-2.歯周病以外の場合の治療方法

3-2-1.正しい力加減で歯磨きを行う

力を入れすぎた歯磨きで歯茎を傷つけて出血している場合は、正しいブラッシングの仕方を身につけましょう。歯ブラシの毛先が広がらない程度の磨き方が、程よいブラッシング圧の目安となります。どうしても力が入ってしまう方は、柔らかめの歯ブラシを使うことをおすすめします。歯茎をマッサージするように優しく磨けば、2~3週間で出血も改善されるはずです。

3-2-2.服用している薬を変える

降圧剤などの薬の影響で歯茎から出血しやすくなっている場合は、受診しているお医者さんに相談して薬を変更してもらいましょう。変更できない場合は、1カ月に一度のペースで歯医者さんでクリーニングを受けることをおすすめします。歯垢や歯石が溜まらないようにして、歯周病を改善することで出血を防げます。

3-2-3.ドライマウスの原因を特定

ドライマウスの原因は、ストレスや生活習慣、薬の副作用などが挙げられます。そのため、まずは受診して原因を特定してもらいましょう。その上で、ストレス発散や生活習慣の見直し、服用している薬の変更を検討する必要があります。また、食後の歯磨き、人工唾液の使用、水やお茶をこまめに飲むことでお口を乾燥から守れます。

3-2-4.歯ぎしりはマウスピースで改善

歯ぎしりは寝ている間に行っている場合が多いです。そのため、就寝中にマウスピースを装着することで予防します。市販のマウスピースもありますが、やはり歯医者さんで作ってもらった方がぴったりはまるので良いです。基本的に上あごの型を取り、1~2週間で完成します。

食いしばりは、勉強やスポーツに集中しているときに無意識に行っているので、まずはそれを意識して気づいたらやめるようにすることが大事です。どうしても食いしばってしまう場合は、集中する作業をしているときにマウスピースを装着するようにしましょう。

3-2-5.ホルモンバランスが変化するときは、お口のケアが大事

歯周病が進行しやすい状態なので、丁寧な歯磨きと歯医者さんでのクリーニングでお口の健康状態を保つことが重要です。普段より予防歯科の意識を高く持つようにしてください。

歯磨き_血_お口のケアをする女性

3-2-6.タバコによる歯茎の出血には禁煙

禁煙することで改善できます。腫れの原因がタバコのみであれば、喫煙をやめることで血流が良くなり歯茎の腫れがひいていきます。

3-2-7.病気の場合はお医者さんへ

歯医者さんに行って、歯茎から出血した原因を調べてもらいましょう。歯周病や歯ぎしり、ドライマウスでなければ、大きな病気の徴候である可能性も稀にあります。歯医者さんで原因が特定できない場合は、病院で検査してもらうことをおすすめします。

4.まとめ

歯磨きをしていて血が出るのは、歯周病の可能性が高いです。歯周病によって歯茎が炎症を起こして、歯磨きの刺激で出血してしまいます。歯周病は進行すると外科的処置などの大きな治療が必要になり、最終的には歯を失う事態にもなります。

そのため、出血していてもきちんと歯を磨いて、歯周病を防ぐよう努めましょう。また、歯周病以外の原因で歯茎から出血している場合もあるので、早めに歯医者さんを受診してください。

(※)この記事で取り扱っている治療には自由診療の項目が含まれています。

 

飯田歯科医院_歯磨き_血

執筆者:歯科こえ 編集部

歯科こえでは、お口のトラブルをサポートする情報を掲載しています。読者の方々が抱える悩みや症状、その原因を解説し、治療方法なども記載しています。また、歯科こえコラムの全記事を歯科医師が監修しています。

歯磨きで血が出る原因とは?出血時の対処法と根本治療を解説 2019-11-26T16:46:13+09:00
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