毎日の歯磨きをがんばっている人はたくさんいますが、正しい歯磨きができている人は多くありません。丁寧に磨くことは大事ですが、ただ時間をかければいいというものではありません。
歯磨きの効き目をしっかり出すには磨くタイミングや、磨き方にも注意が必要です。正しい歯磨きとは、いつどれくらいの時間をかけて磨くことをいうのかを説明していきます。
この記事の目次
1.1回の歯磨きにかける時間と1日で歯磨きをする回数について
1-1 平均的な歯磨き時間は『5分未満』
あるデータによれば、半数近い44.0%の人が歯磨き時間1~3分未満、次いで多いのが3〜5分未満で34.2%となっています。1回の歯磨きにかける時間が5分未満というのは、果たして長いのでしょうか、それとも短いのでしょうか。
「きちんとした磨き方をしていれば、十分な時間といえる」というのがその答えです。
1-2 目指したい歯磨き時間『3分磨きを3回』
歯磨きで大切なことは「磨き残しを作らない」ということです。歯磨きの時間が短かすぎるとよくないといわれるのは、短い時間で全ての歯をしっかり磨けないことがあるからです。磨きのコツは、全ての歯をまんべんなく磨くことです。正しい歯磨き方法で、ある程度の時間をかけてしっかり磨くことを目指しましょう。
歯磨きを正しく行うと、歯を一本ずつ磨くことになります。歯の表面を全て磨いて、さらに歯と歯茎の境目や、歯と歯の間の汚れを除去していきます。このようにしっかりと磨いていくと、全ての歯をきちんと磨くのに10〜20分かかります。だからといって、毎度10~20分かけて磨けばいいというわけではありません。
また、かつて提唱された「3・3・3運動」(1日3回、食後3分以内に3分間歯を磨く)に沿って歯磨きをしていればよいというわけでもありません。大切なのは、しっかり歯垢を落とせているかどうかです。歯垢をきちんと落とす磨き方ができていれば、1回につき3分程度の歯磨きで良いといえます。
子どもの場合は大人による仕上げ磨きも必要ですから、大人とは異なります。子ども自身で磨かせてから、大人が仕上げに3分ほどかけて、子どもが自分では磨きにくいところを磨いてあげるとよいです。
1-3 正しい歯磨きの回数とは『3回以上』
あるデータによると76%の人が1日に2回もしくは3回以上歯磨きをしています。男女比では、男性よりも女性のほうが歯磨きの回数は多くなっており(リサーチバンク調べ)、歯ブラシと歯磨き粉を使って1日に2回以上、1回あたり1〜5分磨くという人が大半ということになります。
歯磨きの回数については、医学的に明確な答えが出ているわけではありませんが、歯磨きの目的が「歯垢をしっかりと取り除く」というところから、毎食後の3回に就寝前を加えて、1日に4回磨くのがより良いといえるでしょう。
1-4 歯磨きの時間を短縮するには
しっかり磨くと、歯磨きには思ったよりも時間がかかることがわかります。しかし、毎回の食事ごとに時間をかけることは難しいですし、外出先などでもなかなか実行できません。そこで、歯磨きの効果は維持しつつ、歯磨き時間を短縮できる方法としてはどのようなものがあるでしょうか。
・正しい磨き方で磨く
時間をかけても、正しい磨き方でなければいくら時間をかけてもきれいにはなりません。間違った歯磨き方法で長く磨いてしまうと、むしろ歯茎を痛めてしまう原因になります。大事なのは、正しい磨き方で効率的に磨くことです。
歯の磨き方がよくわからない場合は、歯医者さんで歯科衛生士が教えてくれます。きちんと磨いたかどうかを確かめるためには、順番を決めていつも決まった順に磨いていくとよいでしょう。
・電動歯ブラシを使う
歯磨きで汚れをしっかり落としたい場合は、電動歯ブラシを使うこともできます。電動歯ブラシは機械で磨いていくので、手で歯磨きするよりも短時間でしっかり磨くことができます。
電動歯ブラシには振動で磨くタイプと超音波を使ったものがあります。いずれも、手で磨くよりも楽に歯垢が落とせるように工夫されています。ただし、電動歯ブラシを使う場合でも、正しく歯に当てるなど正しい使い方に気をつけなくてはなりません。
デンタルフロスなど補助具を使う
歯磨きは歯ブラシと歯磨き粉で行うのが一般的ですが、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れが落ちにくい場合があります。
歯ブラシで無理やりゴシゴシ磨くのは時間もかかりますし、歯茎を痛めることにもなるので、デンタルフロスや歯間ブラシなど市販の補助器具を上手に使いましょう。
歯ブラシで歯の表面を磨いてから、デンタルフロスなどで歯間を効率よく掃除することで、歯磨きの時間を短縮できます。
2.歯磨きをすべき時間帯
歯磨きは、ただ時間をかけて長く磨けばよいわけではありません。また、磨くタイミングというものも大事になります。食事をした後、どのようなタイミングで歯を磨くのが良いのでしょうか。
また、正しい歯磨きをしようとすれば、それなりに時間がかかりますが、毎回きちんと磨くのは大変です。1日のうち1回だけ正しく磨くとすれば、いつ磨くのが虫歯などの予防にとってはよいのでしょうか。効率的な歯磨きの方法について知っておきましょう。
2-1 歯磨きのタイミングは『食事してから30分後』
歯磨きは、食事の30分後を目安に行うことをおすすめします。食べ物を食べても、唾液の自浄作用によって口の中は酸性から中和されます。唾液が酸を中和するまでは歯は酸性に傾いており、酸性のときに歯ブラシでこすってしまうと、歯がすり減る元になってしまいます。ですから、中和が完了する食後30分あたりで歯を磨くのがよいでしょう。
虫歯の元になる歯垢は、食事をとるごとにつきます。磨かずに放置すれば食事後24時間以内に歯垢になって歯に付着してしまい、さらに放置するともう普通の歯磨きでは落とせなくなります。ですから、まず歯磨きは毎食後行うことを基本とします。
また、朝の歯磨きについては、起床後すぐにすべきという考え方もあります。寝ている間に細菌が増えているので、まず起きたらすぐに歯を磨き、それから朝食をとります。うがいをするだけでもよいでしょう。もちろん、朝食後にも歯磨きを行います。
2-2 大切にしたい「寝る前の歯磨き」
きちんと時間をかけて歯を磨くのは、1日に1回でも大丈夫です。その場合は、就寝前に磨くようにします。寝ているときは唾液の分泌が減り、自浄作用が弱くなります。
そのため、寝ている間に虫歯や歯周病のリスクが高まるので、寝る前には、しっかり10〜20分かけて磨くようにします。夕食後に磨く他に、寝る前にも磨くとなると、1日に磨く回数も増え、1日4回は歯磨きをすることになります。
3.まとめ
歯磨きは時間をかけすぎても、時間が短すぎてもいけません。大切なのは、歯磨きにかける時間から考えるのではなく、歯垢を落とす正しい歯磨き方法を把握し、その上で、正しく磨くにはどのくらいの時間がかかるのかを知っておくことです。
また、毎回きちんと時間をかけることは難しいので、時間を短縮してもきれいに磨ける方法を実践する、寝る前だけはしっかり磨くなどメリハリをつけて磨くことも大事です。
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