歯を美しく健康に保つために、毎日の歯磨きはとても大切です。しかし、使用している歯ブラシの交換時期を決めている人は少ないのではないでしょうか。
歯ブラシは掃除と同じです。掃除において道具が大切なように、歯磨きにおいてもどんな歯ブラシを使うかはとても大切です。
この記事では、歯ブラシを交換すると良い時期と、古い歯ブラシを使い続けるリスク、そして歯ブラシを少しでも清潔に保てるメンテナンス方法についてお伝えします。
この記事の目次
1.歯ブラシの正しい交換時期
1-1 歯ブラシの寿命は1カ月
歯ブラシの交換時期を、「毛先が広がったら替える」と考えている人は多いかもしれません。歯ブラシはとても丈夫に作られている上、毛先が透明で汚れが目立ちにくいため、何カ月か使用しても「まだ使える」と思ってしまう方もいるのではないでしょうか。
しかし、歯ブラシは衛生用品です。ブラシの中のばい菌の繁殖を考慮すれば、たとえ変形や摩耗がなくても交換時期は1カ月が目安になります。しかしこれはあくまでも目安であり、一回あたりの歯を磨く時間や力加減によっても変わります。
1-2 毛先が広がったらすぐ交換
歯ブラシの毛先が広がっているかどうかは、ヘッドから歯ブラシの毛がはみだしているかどうかで判断します。毛先が広がった歯ブラシは、しっかり歯の汚れを落とすことができず、虫歯や歯周病のリスクが高まります。毛先が広がってしまったら、1カ月たたなくてもすぐに歯ブラシを替えるようにしましょう。
1-3 電動歯ブラシは3カ月に一度
電動歯ブラシの場合、歯ブラシのヘッドが高価なことや、電動で歯ブラシが高速に動くことから毛先に余計な力が加わらず、普通の歯ブラシよりも毛先が広がりにくいため、メーカー推奨交換時期は3カ月とされていることが多いようです。
でもこれはあくまで目安であり、衛生面から考えるとやはり同じように1カ月で替えるのが望ましいと考えられます。
2.古い歯ブラシを使い続けることのリスク
2-1 歯ブラシとしての性能の低下
買ったばかりの歯ブラシは、毛先がピンと立ち、細かい食べかすや歯垢などを掻き出す力が強いといえます。鉛筆のように握って持つ「ペングリップ」は手に力が入り過ぎることを防ぐ磨き方ですが、買ったばかりの歯ブラシはペングリップでも十分に歯の汚れを落とすことができます。
歯と歯の間や歯と歯茎の隙間、大臼歯の溝など、歯の構造は複雑です。汚れをしっかり落とすためにはわずかな隙間にもしっかり入りこんで掻き出すことのできる歯ブラシである必要があります。
ですから、毛先が広がった使い古された歯ブラシを使い続けると、しっかり汚れを落とすことができず、虫歯や歯周病にかかりやすくなるといえるのです。
2-2 歯を痛めてしまう可能性
歯の表面を覆っている硬いエナメル質は、人体の中でも硬い部分であるといわれています。その一方で、強すぎるブラッシングはその硬いエナメル質でさえも傷つけてしまいます。
買ったばかりの歯ブラシならば、細かな部分まで汚れを落としきることができても、毛先の広がった歯ブラシはしっかり汚れを掻き出すことができません。
2-3 歯ブラシは細菌の温床
口の中にはおよそ1000億から2000億の細菌がいるといわれています。 通常は善玉菌や唾液の作用で口内のバランスが保たれていますが、歯を磨かずに放置した場合は歯を磨かずに放置した場合は1兆個の菌まで増加し、悪玉菌と善玉菌のバランスも崩れてしまいます。
口の中の汚れを取る歯ブラシは、汚れやすいため使い終わった後にきれいに水洗いをしても、歯ブラシの中の全ての菌を取り除くのは難しいです。そうして歯ブラシは使えば使うほど歯ブラシに菌が付着しやすくなりますので、口内環境を保つためにも正しい歯ブラシのケアが大切です。
3.正しい歯ブラシのメンテナンス
3-1 歯ブラシの洗い方と保管方法
1.使い終わった歯ブラシは、水圧の強めの水でよく洗い流す。特にヘッドの毛先を重点的に洗う
2.洗い終えたらしっかり水を切り、風通しの良い場所でヘッド部分を上に向けて乾燥させる
3.携帯用の歯ブラシの場合は、ヘッドの水分を布などでしっかりと拭き取ってからしまう。
3-2 やってはいけない歯ブラシの保管方法
・コップなどの水で洗う
コップの中の水の中などで歯ブラシを洗っても、菌が付着するだけできれいになりません。
・共有の歯ブラシを使う
歯ブラシから相手の菌がうつってしまうのでよくありません。
・毛先が触れる距離に人の歯ブラシを置かない
毛先が触れ合うことで細菌感染が起こります。
・お風呂やトイレに歯ブラシを置かない
お風呂やトイレは家の中でも特に細菌が多い場所です。空気中に細菌が浮遊しているため歯ブラシにも付着してしまいます。
4.自分に合った歯ブラシの選び方
4-1 硬さ
歯ブラシの硬さには「やわらかめ」「ふつう」「かため」の三種類あります。
・やわらかめ 歯周病予防や現在治療中の人向け
・かため 弱い力でしっかり磨きたい人向け
・ふつう 歯茎が健康な人向け
歯垢の清掃能力は、かため>ふつう>やわらかめ となります。
しかし、かための歯ブラシは清掃能力が強いばかりに、磨き方によってはエナメル質を傷つけたり、歯茎を傷つけてしまったりする恐れがあります。ご自身の歯の状態や、磨き方などを考慮して歯ブラシを決めることが大切です。
4-2 ヘッドの大きさ
ヘッド部分が大きいと、毛先が口内の奥まで届きにくく、磨き残しの原因となります。ヘッドの大きさが「小さめ」と書かれているものを使うようにしましょう。
4-3 部分用歯ブラシも活用する
普通の歯ブラシではどうしても奥歯の裏など磨きづらいところまでは届きにくいという方におすすめなのが、ワンタフトブラシと呼ばれる部分用歯ブラシです。
ワンタフトブラシを使うことにより、奥歯の裏や親知らずの隙間、歯が重なり合って磨きづらい部分などを磨くことができます。ワンタフトブラシにも種類があり、毛先が三角形になっているものや、毛先が平らになっているものがあります。
奥歯の裏や歯の重なった部分、大臼歯の溝などは、毛先が硬く三角形になっているものが汚れを取りやすいです。インプラントや、歯周ポケットなどのケアは、毛先が柔らかく平らになっているものをすすめられることがあります。
4-4 年齢に合ったものを使う
口内環境は年齢によっても大きく変わるため、年齢に合わせた歯ブラシを選ぶようにしましょう。子供やお年寄りは、歯茎が弱いため、ヘッドが小さく毛先もやわらかいものを選ぶと歯茎を傷つける心配がありません。
子供の歯ブラシは対象年齢が書かれているものが多いですが、対象年齢から大きく外れた歯ブラシを使い続けると、磨き残しにつながってしまいます。自分の年齢と歯茎の状態に合わせて歯ブラシを選ぶことが大切です。
5.歯医者さんでブラッシング指導を受けるメリット
5-1 正しいブラッシング方法がわかる
正しいブラッシングを行うことが、歯周病予防、ならびに美しい歯を長く保つためには必要不可欠です。
一方で「正しいブラッシング」を行うことは簡単ではありません。なぜなら口内環境は一人ひとり異なり、歯の形状や形、本人の磨き方の癖などにより磨き残しやすい部分は異なるからです。
ですから、少なくとも半年に一度は、歯科医院で歯科衛生士によるブラッシング指導を受けることをおすすめします。
5-2 磨き残しやすい部分を知ることができる
ブラッシング指導では、歯周ポケットの深さや出血の有無などにより、日頃歯をしっかり磨けているかどうかを知ることができます。自分ではなかなか気づけないしっかり磨けていない部分を指摘してもらうことができ、より効率的なメンテナンスの方法を知ることができます。
6.まとめ
良い歯ブラシを使うことは歯をきれいに保つためにはとても大切です。しっかり磨いているのに虫歯や歯周病になってしまう方は、もしかすると使っている歯ブラシに問題があるのかもしれません。ぜひご自分に合った歯ブラシを使って、きれいな歯を保ちましょう。どんな歯ブラシを使ったらよいか迷う方は一度、歯科衛生士の方に相談することをおすすめします。
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