虫歯予防にはフッ素が効果的だという話を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、どのような理由からフッ素が虫歯を防ぐのか知らない人は多いようです。そこで、この記事ではフッ素が虫歯を予防する仕組みについてお伝えしていきます。
また、フッ素を使った歯のケアは歯医者さんだけでなく自宅で行うことも可能です。
ただし、自宅と歯医者さんで使用するフッ素には大きな違いがあることも理解しておいたほうがよいでしょう。フッ素に関する正しい知識を身につけて、大切な歯を虫歯から守ってください。
この記事の目次
1.フッ素が虫歯を予防する3つの働き
1-1.歯を強くする
わたしたちの歯はとても硬いエナメル質で覆われています。ところが、虫歯菌のひとつであるミュータンス菌がつくりだす酸によってエナメル質が溶かされてしまうのです。
この状態が虫歯です。酸で溶かされてしまった歯は自然に元に戻ることはありません。そこで、酸に溶けにくい強い歯をつくる必要があるというわけです。
フッ素はエナメル質と結びついて、酸に溶かされにくい強い歯をつくる働きがあります。フッ素によってエナメル質が強化されて虫歯に強い歯をつくるのです。
1-2.虫歯になりかけの歯を修復する
虫歯になりかけている状態、いわゆる初期虫歯であれば、フッ素による再石灰化作用で元に戻る可能性があります。ただし、不十分なブラッシングでは、フッ素の効果は期待できません。
このように、フッ素には虫歯の進行を防ぐ役割も期待できます。
2.家庭で行えるフッ素塗布の方法
自分で気軽にフッ素ケアをすることができます。歯磨きやうがいなどさまざまな方法があるので、毎日の歯のケアにフッ素を取り入れてみましょう。
2-1 フッ素入り歯磨き粉
家庭でフッ素ケアをする方法としてもっとも一般的なのが、フッ素入りの歯磨き粉を使用することです。現在では、ほとんどの歯磨き粉にフッ素が含まれています。
特に子供の生えたての歯は弱く、フッ素入りの歯磨き粉で歯を磨くことが大切であると考えられています。
フッ素入りの歯磨き粉は歯の汚れを落とすだけでなく、フッ素を歯の表面に塗るという意識をもつようにしてください。
すすぎすぎてしまうとフッ素が流れ出てしまう事から、うがいは少ない回数で済ませた方が良いという考えもあるようです。
ただし、よくゆすがないと気持ちが悪いという方も多いと思うので、歯磨き後のフッ素洗口をおすすめしています。
うがい薬は、使用した後はお水でうがいしなし事がポイントです。また、後述のフッ素ジェルも有効です。
2-2 フッ素入りジェル
フッ素の入ったジェルもあります。フッ素入り歯磨き粉で歯を磨いた後に、フッ素入りジェルを歯の表面に塗ると効果がさらに高くなります。特に夜寝る前に使用することをおすすめします。
歯ブラシにフッ素入りジェルをのせ、1分ほど歯を磨くように塗っていきます。そして、水を口にしないで軽く吐き出してください。どうしてもうがいをしたい場合には、少ない水で軽く1回だけうがいをするとよいでしょう。
2-3.フッ素洗口液
洗口液とは、うがいをする際に使う液体のことです。フッ素入りのケア用品のなかで、もっとも虫歯予防の効果が高いといわれているのがフッ素洗口液です。
1日1回、歯磨きの後にフッ素洗口液でうがいをします。夜寝る前に行うと効果が高くなります。
ブクブクうがいができるようになった子供におすすめですが、飲みこまないように注意しなければなりません。
万が一大量に飲みこんでしまった場合には応急処置として牛乳を飲ませ、すぐに歯医者さんに連絡して適切な処置を受けてください。
また、フッ素洗口液は市販されていません。歯医者さんで購入することができるので、追加購入のついでに定期検診を受けるきっかけにもなります。
2-4 スプレータイプ
歯を磨いた後に、歯ブラシにスプレーを吹き付けてもう一度磨きます。うがいの必要がないので、ブクブクうがいのできない小さな子どもに特におすすめです。
ただし、スプレータイプはフッ素の濃度が薄いという欠点があります。他のフッ素入りケア用品と比べると虫歯を予防する効果が低く、予防率は10~30%程度だといわれています。
3.歯医者さんで行うフッ素塗布とは
虫歯予防のためにフッ素を活用するのであれば、やはり歯医者さんで塗ってもらうこと(塗布)をおすすめします。
3-1.歯医者さんのフッ素は濃度が高い
家庭用のフッ素入りケア用品と、歯医者さんで使用するフッ素の大きな違いは濃度です。歯医者さんで使うフッ素の濃度は、家庭用フッ素の10~20倍ほどです。当然、フッ素の濃度が高いほど虫歯を予防する効果が期待できます。
歯医者さんで使用するフッ素は濃度が高いので、歯の表面に取り込まれると数か月にわたって効果を保つことができるとされています。
3-2.歯医者さんで行うフッ素塗布は3種類
歯医者さんでフッ素を塗る方法は、次の3つです。歯医者さんによってどの方法を採用しているのか異なりますので、事前に確認しておきましょう。
歯面塗布法
フッ素に浸した綿棒や綿、もしくは歯ブラシで歯の1本1本にフッ素を塗っていきます。もっとも短時間でフッ素を塗ることができる方法です。
トレー法
トレーと呼ばれるマウスピースにフッ素を入れ、口にくわえます。3~4分ほどその状態でフッ素を歯にしみ込ませていく方法です。上の歯と下の歯でそれぞれ行うので、時間がかかります。
イオン導入法
フッ素に浸した綿、もしくはフッ素を入れたトレー(マウスピース)を口にくわえた状態で弱い電流を流します。電流は流れていることを感じないほど弱いものですが、フッ素を歯の表面にしっかりと付ける働きがあります。
イオン導入法もトレー法と同じく、上の歯と下の歯でそれぞれ3~4分ずつ行います。
3-3.歯医者さんでのフッ素塗布は定期的に
家庭で使用できるフッ素は濃度が低いため、毎日使いつづけることで効果を期待できます。しかし、それだけでは虫歯予防の効果は低いので、定期的に歯医者さんで濃度の高いフッ素をしっかりと塗ってもらう必要があります。
3か月に1度の割合で歯医者さんでのフッ素塗布を受けるのが理想です。特に、歯の弱い15歳くらいまでのお子さんは歯医者さんでフッ素を塗ってもらいましょう。
4.フッ素に関して知っておきたいこと
4-1 フッ素塗布をするタイミング
フッ素はなるべく年齢の低いころから使用すると効果が高まるとされています。乳歯の時期や永久歯の生えたての時期にフッ素ケアをしっかりと行って歯の質を強くしましょう。
4-2 フッ素を塗った後の注意点
フッ素を塗った後は30分ほど、飲食はひかえてください。フッ素が流れないように、うがいもしないように気をつけましょう。
4-3 フッ素だけで虫歯は防げない
フッ素を塗っているからといって、虫歯ができないわけではありません。フッ素は、あくまでも虫歯を予防する手段のひとつでしかないのです。
虫歯を予防するためには、フッ素ケアのほかに歯磨きや歯にやさしい食生活などが大切です。
歯磨きをしっかりしてフッ素を塗っていても、糖分の多い食べ物や飲み物を常に口にしているようでは虫歯ができるリスクは高まるでしょう。フッ素ケアだけでなく、生活習慣の見直しも欠かせません。
5.まとめ
フッ素には虫歯を予防する効果があるといわれています。
フッ素入り歯磨き粉などを活用して家庭で日常的にフッ素ケアをするとともに、定期的に歯医者さんでフッ素を塗ってもらうことがポイントとなります。
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